ロシアとウクライナの戦争の陰で、アフガニスタンの現状についての報道が極めて少なくなっています。最近聞こえてくるニュースとしてはタリバンによる女子大学教育の停止、NGO女性職員の出勤停止でした。もちろん、大きなことには間違いありませんが、実際に現地の人たちがどのように暮らしているのか、どんな支援が求められているのかについてはなかなか伝わってきません。
私にとって年4回届くペシャワール会の会報は、アフガニスタンの今を知る貴重なメディアです。現地で活動するPMS(ピース・ジャパン・メディカル・サービス 平和医療団・日本)の事務局長ジア ウル ラフマンさんの報告を読みました。PMSは、砂漠化した土地に水を引き、土地を再生し、農地として蘇らせるなど、アフガンの人々の生活を支える現地の事業体です。
中村哲さんが亡くなられてから3年あまり経ちました。12月に発行された会報にある現地からの報告をじっくりと読ませていただきました。新しい用水路が完成したこと、新たな用水路事業が始動したこと、8月の大洪水で補修が必要となった堰の修復工事を進めていること、政府によるワクチン接種が継続され、診療所の管轄内では全住民が接種し、コロナ感染が減っていることなどが現地から報告されています。こうした事業はタリバン政府にも認められ、関係は良好とのことです。
しかし、現地の暮らしは深刻です。報告によると、「昨年来の米国による経済制裁は解かれず、雇用機会もなく、銀行機能も未だに不十分で、日々物価が高騰し、アフガンの人々は苦しんでいます」とありました。
そんな中で、中村医師の進めた事業が、現地の人たちに引き継がれ、発展していることに大きな希望を感じます。
昨年10月11日、ジャラバード市内のガンベリ記念公園内に中村広場の完成を祝うオープニングセレモニーが行われたそうです。記念塔には、生前の中村さんのにこやかな笑顔が。

「飢えた人々に温かいパンの一切れを分かち合おうとする真心だけが、励みであり、信ずるに足りることです。生殺与奪の権を握る自然の大河は、轟々(ごうごう)と流れ、真っ白な水しぶきをあげて岩に砕け散る。それが何かを語るようです。人を欺かぬメッセージに耳を傾けます」(中村哲さんの手記より)