来月のEテレ『100分de名著』はカールマルクスの『資本論』がテキストになるそうです。10年前にも取り上げられていますから、2回目ではないでしょうか。今回の講師は若手の研究者・斎藤幸平さん。
マルクスは宗教を排斥したとか、一度した使ったことのない「宗教はアヘンである」という言葉を持って誤解をしている方も少なくないかもしれません。マルクスの言うアヘンというのは、鎮痛剤として使われていたアヘンのことを指しています。そのように読めば、「宗教というのは鎮痛剤である」ということです。心の痛みを和らげるものということですから、目くじら立てる必要など全くないのです。しかしながら、浄土真宗関係の書籍の中でも、いまだに誤解に基づく偏見を目にすることがあり、苦笑することがあります。仏教では物事を正しく見ることを正見といいますが、そのように見ることはなかなか難しいのかもしれません。
マルクスは商品経済の仕組みを深く分析し、資本主義社会における搾取をつまびらかにしました。封建時代まで搾取の実態は目に見える形であったのです。農民の取り分はこれ、領主はこれ、と実にわかり易かったのですから。それが見えなくなった資本主義社会において、どのような形で搾取ー搾り取られるのか。資本論の最も大事なところの一つですから、番組でも紹介されるのではないでしょうか。
貧困と格差の拡大、地球的規模での環境破壊、現在の投機的なマネー経済のあり方など、真面目に考えようと思ったらマルクスを勉強するのがよいと思います。
例えば、こんなフレーズが出てきます。「資本は、社会によって強制されるのでなければ、労働者の健康と寿命にたいし、なんらの顧慮も払わない」
ブラック企業や過労死の実態をピタリと言い当てていると思いませんか。
実は私自身も、マルクスの『資本論』を数年かけて30代の頃に読みました。ソ連や中国のような社会システムはマルクスは全く想定していません。マルクス、そして盟友のエンゲルスは、資本主義の発達した国が、次の社会を作る条件、人々を生み出し、選挙による多数者の合意によって社会を変えていくと考えていました。
世界的な課題が山積する今、マルクスは再評価される時を迎えているのではないでしょうか。
この社会のままで私たち人類の歴史は終わるのでしょうか。そんな壮大なことも考えることができます。何も宇宙だけが壮大ではありません。人類の未来だって、壮大なスケールでマルクスは見通していますよ。