もう100年以上前の話です。町内のある集落に3人の優秀な子どもがいました。それぞれの家庭では進学のためのお金を工面することができませんでした。そこで、村の人たちはもっと勉強をさせてあげたいとお金を出しあって、3人を進学させました。その一人は東京の大学を出てお医者さんになったのです。田舎でお医者さんをすることはなかったそうです。しかし、故郷のお墓へ分骨して欲しいとの希望を託し、お亡くなりになりました。自らを育ててくれた集落への感謝の気持ちがそうさせたのではなかったでしょうか。それも、もう50年ほど前のことです。
お孫さんのお一人は、最近まで開業医として働かれました。さらにその息子さんも現在、勤務医として働いておられます。
土曜日、亡き方のお孫さん、ひ孫さん、そして玄孫さんがお寺にお見えになりました。お墓をお守りすることが難しくなり、お墓をしまいたいということでした。その相談の中で、記したようなお話をうかがったのです。
遠い昔、集落のみなさんが出し合った浄財は、いまも生き続けているのでした。
思いがけず、尊いお話を聞かせていただきました。