吾輩は、岩井をなわばりにしている猫である。
一昨年まではハチワレのダブ兄さんがこのあたりのボスをされていたが、残念ながら行方知れずになった。そこで、吾輩の出番となった。
パトロールを通じ、サイホウジ関連の古家で生意気なチビが飼われていることや、黒い子猫がその家の縁の下に迷い込み、飼い猫になったことを把握した。また、この家のニンゲンたちが外の猫にも奉仕する感心な姿勢を持ち合わせているという発見もした。このことは、荒野に生きる吾輩の健康維持にも大きく寄与している。

朝はそんなに早くない。明るくなってから玄関先に出向き、仕事に出るおばさんが出てくるまで小屋(専用の箱)の上に座っておく。すだれの裏なので、通行人に気づかれることもない。おばさんが戸をガラリとあけて、吾輩はシャー!と、吠える。するとカリカリと魚の缶詰4分の1が出る。缶詰は3匹の飼い猫たちとのシェアだ。
雪が酷い日は、自主的に玄関の中に入っておく。飼い猫たちは格子戸ごしに会いに来て、黒猫などは前脚を伸ばしてくる。ずいぶん大きくなって、灼熱の庭で見守ってやった恩を忘れているのだ。
天気の良い日は、冬でも中庭が最高だ。あたたまった岩や積んである枯れ草、まとめた古雑誌など、寝床にも事欠かない。
夕飯は、まちまちだ。
寺から帰宅する坊さんと会えた時は、その場でカリカリが供されるし、会えない時は暗くなるまでにカリカリが皿に入れてあることが多い。
吾輩が立ち寄れなかった日は心配されているようだ。ここの飼い猫でもないのに、おせっかいこの上ない話だ。だが、「シマちゃん」と呼ばれたら「ニャーン」とねぎらいの声をかけてやることにしている。

では、またの機会までおさらばだ。





