夫婦で川柳を楽しみ、十数年前、句集にまとめられたご門徒さんがいらっしゃいます。今日はご主人の7回忌でした。90代半ばを迎えた奥さんもお参りされ、ナンマンダブと称えておられました。
ご主人のTさんは大正15年生まれです。何気ない日常をユーモラスにうたった句のなかに、戦争の記憶を止めた句を見つけることができます。
「出撃の前夜は神になっていた」
「うつむいたとき人間の顔になっている」
出撃するときに帰ってくることは想定されず、戦で死んだら「神」となる。そんな時代があったのです。その人がうつむいた顔をするとき、それは「神」ではなく「人」なのだとTさんは詠まれたのだと想像しています。
奥さんであるEさんの句からも1つ。
「輪になればトップもビリもない温かさ」
この句を読んで、お念珠(ねんじゅ)もそうだなと思いました。一番下に大きな珠があります。阿弥陀さんです。左と右に一つずつ色の違う珠があります。父・母です。その周りにつながっている珠は私たちです。阿弥陀さんの光の下に、みながつながり、お互いに光り、支えあって生かされている姿をあらわしています。
私はTさんとの直接の面識はありませんが、これからも戦のない時のなかで法事を迎えられるようにしなければと思いを新たにしています。




