
『戦争は女の顔をしていない』の漫画版を読んでいます。原作は、スヴェトラーナ・アレクシェーヴィッチによるノンフィクションです。第二次世界大戦の独ソ戦に従軍したソビエトの女性たちからの聞き取りがまとめられています。原作を読んだことはありませんが、漫画版がいま話題になっているとニュースで知って手に取りました。
戦場は女性を変えてしまうことが描かれます。初めて敵を撃ち殺した狙撃兵は、衝撃で泣き出します。しかし、しばらくしてそういう感情はなくなってしまうのです。
戦場であっても、女性として変わりようがない部分があることが描かれます。生理用品などありません。真夏の行軍の最中、赤いシミが砂に付きます。履いているズボンは乾ききってガラスのようになり、擦れて傷ができるのだそうです。
記憶をたどり、戦争を語り、戦後を語る従軍した女性たち。原作者は感情をあらわさず、聞き手に徹していますが、第1巻の最後で涙します。
「戦争で一番恐ろしかったのは、男物のパンツを穿いていることだよ」と話す女性。4年間ずっと男物を支給され、ソ連との国境を超えたポーランドで、はじめて女物のパンツとブラジャーが支給されます。
「ハハハ。あたしたち初めてあたりまえの女物の下着をもらったんだよ」と笑う女性。その証言を聞いて号泣する作者の姿。
人間であること、そして、女性であることを否定する戦場の悲惨さに、作者は涙したのではないでしょうか。
原作も機会あれば読んでみたいと思います。