今日朝早くにご往生されたご門徒さんのところで臨終勤行を勤めました。コロナ禍のもと、ご家族も思うように看病やお見舞いができない状況にあります。
娘さんからうかがいました。ご往生されたお父さんは看護師さんに、「娘に『世話になった。ありがとう』と伝えてほしい」と伝言されていたそうです。そして、苦しい息の中、娘さんの名前を呼ばれていたとのことです。
「お父さんの子どもに産まれてきてよかった。苦しかったね。よくがんばったね。ありがとう」と娘さんは涙されました。
親が子に、子が親に、「ありがとう」といえる関係のなか、ともに生きてこられたのです。これ以上の感謝の言葉があるでしょうか。
盆栽が趣味で、仕事の合間に世話をした鉢は、いちばん多い時には百を超えたとか。奥さんが趣味の時間を楽しめるようにと料理もすすんでされたそうです。魚料理はお手のもの。煮物、揚げ物、なんでも上手につくられたそうです。
「元気な頃はお寺の掃除によく出かけていたし、夫婦で本願寺にもお参りしていた」と息子さんからうかがいました。「『人の嫌がることはしてはならない』とよく聞かされました。きびしくも真っ直ぐで、まじめな父でした」。
30年ほど前にお寺に時計を寄贈していただきました。合わせてもすぐに時間が早くなってしまうのですが、今も止まることなく時を刻んでいます。
奥さんは先にご往生されました。ご遺体を前にして、「なんまんだぶ、なんまんだぶ」と手を合わせ、いっしょにお経をあげたこと、忘れません。
今日はお人柄についてもお子さんからお聞きしました。お寺を大事に思ってくださっていたことも知ることができました。
長い間、ほんとうにありがとうございました。
合掌