昨日は太平洋戦争開戦の日でした。
昨日そして今日と、久しぶりにこの本をめくってみました。表紙カバーはなくしてしまいましたが、

加藤陽子東大教授著「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」。今年、日本学術会議の任命拒否をされたことでも話題になった方です。2009年に発売され、数度読み返した記憶があります。たくさん線も引いてありました(苦笑) 面白かったのだろうと思います。
加藤さんと中学・高校生の対話形式で展開されています。私がこの本を読んで勉強になったのは、その当時の空気感がよく分かる点にありました。
太平洋戦争の開戦にふれ、幾人かの知識人の反応を加藤さんは紹介しています。竹内好東大教授は「歴史は作られた。世界は一夜にして変貌した。感動にうちふるえ…爽やかな気持ちであった」と記しています。小説家の伊藤整は「この戦争は明るい。実にこの戦争はいい」と日記に書いているそうです。庶民も同じです。「昨日までの安閑たる気持ちから抜け出した」「いよいよ始まる。キリリと身のしまるを覚える」。こうした日記を吉見義明著『草の根のファシズム』から紹介しています。
いったいなぜこのようなことになるのか。
加藤さんは1930年代の外交と軍事が専門です。その立場から30年代の教訓として、国民は社会民主主義的な改革(労働者の団結権や団体交渉権など)を求めていた、また、政権交代が可能となるような政治システムの創出を待望していた、がしかし、戦前の政治システムのもとでは不可能であったと指摘し、その結果、いかなる事態が起こったのか。
改革推進者としての軍部への国民的な人気が高まったというのです。
「国民の正当な要求を実現しうるシステムが機能不全に陥ると、国民に、本来見てはならない夢を擬似的に見せることで国民の支持を獲得しようとする政治勢力が現れないとも限らない」
「いま、世界中で起こっていることじゃないか!」と叫びたくなるような一節です。
文庫にもなっています。若い方にぜひ読んでほしいと思います。